ローダンセ異伝 向日葵(琉菜×エイジ)
 この話は異伝。

 異なる伝と書いて異伝。

 この話は、ある一つの物語がもととなっている。

 ローダンセの花に導かれた二人の人物。

 リィル・ゼラバイアと紅 エイジ

 この二人の粉雪のように儚く、美しく……箱庭を超越せし、一つの永遠の話。

 でも、この話は異伝だから、その物語とは少し異なる。

 いや、正確に言うと過去なんだろうか?

 それとも、未来なんだろうか?

 そのあたりが曖昧。ゆえに、異伝なんだろう。

 ローダンセの物語にしては異なっているが故に異伝なんだろう。

 でも、似ているからこそ異伝と言う名前がつく。

 それだけはいえる。

 この物語は、ローダンセの異伝。

 リィル・ゼラバイアと、紅 エイジの物語ではなく。

 城 琉菜と、紅 エイジ、そして城の皆と築いた一つの思い出の……話。

 この物語は、そう名付けるならば―――――
















君に、ローダンセの花言葉を!

異伝――向日葵





この物語、向日葵のようにまぶしく、ほほえましく――――――









 あの、苦しい戦いから少し経った。

 少し、といっても数ヶ月なのだが、やはり感覚的には少ししか経ってない。

 あれから地球に戻った私達は、いろいろとやることや考えることが出来てしまったのだ。

 地球がこれからも異性人に襲われないという可能性は無い、という理由から、グランナイツは解散されなかったし、そのおかげで仲間達とは一緒にいられるけど、毎日ある訓練と、非常時にはいつでも出撃できるようにという理由で城に今までどおり住むことになってしまった。

 それが不満といえば不満だ。

 戦いが終わったあと、沖縄にいったん帰ってみようとしたところ、非常時に呼べないという理由で許可してもらえなかった。

 そんなことがあったからこそ、不満も一段と増すわけで……

 それから数ヶ月がたち季節は夏。

 明るい日差しと、もくもくと沸き立つ入道雲。

 そんないかにも夏だ!と感じさせてくれる空が一面に広がり始めた。

 そして、その空に後押しされるように私の理性は決壊したのだった。


「ねぇねぇ!みんなで海行こ!海ぃ!!」


 朝。

 毎日恒例のみんなで食べる朝食のときに、私は思い切ってこの言葉を口にした。

 この言葉を聞いたとき、みんなは一様に驚いてたみたいだけど……やっぱりみんなは仲間だった……なんで私がこんなことを言ったのかわかったみたいで、すぐにその話を承諾してくれた。

 もっとも、単純に海に行きたいという気持ちもあったみたいだけども。

 そんなこんなで、私達は海へ行くことになった。

 場所は沖縄。

 私に気を回してくれたみたいだった。






『あ〜!!!浮き輪が流されてる〜〜!!!!』



 砂浜に響く明るい声。

 声の響くほうをみて見ると、ちびっこメイド三人娘―――ブリギッタが、ながされた浮き輪を追いかけて海を泳いでいて、その様子をセシルとアーニャが心配そうに海辺で眺めていた。

 平和な海のワンシーン。

 そこかしこに感じられる平和と、夏。


 私は、その空気を楽しみながら浜辺に一人、ビーチパラソルを立てて海と空を眺めていた。

 もくもくと立ち上る入道雲と、これでもかと肌を焼く太陽の日差し……

 たまに吹く風は、一瞬だけこの熱した体に安らぎと幸せを与え。

 夏の空気は私に沖縄の思い出を思い返させるほどに懐かしい。


ザザーン―――


 押しては返す波の音。

 涼しい音だと、何度聞いても思う。

 一人パラソルの下で、みんなを見ている振りをしていた。

 私は、其処でただ一人寂しく座りながら、ただ一人を見ていたのだ。

 そう、最初から一人だけを見ていた。


「ああ、あの馬鹿……ま〜たリィル困らせてる……」


 瑠璃色の髪を持つ少女―――リィルを困らせているのにも気が付かずに、

 私の視線の先には、ただ一人赤毛の青年がいる。

 紅 エイジ……

 いつのまにか、別の場所を見ていたはずなのに目で追ってしまうような存在だった。

 知らず知らず、癖の一つ一つまで覚えてしまっていた。

 そして、今もまた無意識に彼を目で追いかける自分がいる。


『や、やめ……うわぁああああああああ!!!!!!!』


 乗っていたゴムボートをブリギッタとチュイルにひっくり返されて、彼は叫び声を上げながら海に沈んでいった。

 そのゴムボートが、ブリギッタとチュイルの所有物に変更されたのは言うまでもないこと。



「あんの馬鹿……」


 パラソルの下、頭が痛くなってくるのを堪える。

 夏の太陽が、私達を、その強烈な日差しで照らし出していた―――

 

 
†††


 ぎぃっという音が床を踏みしめるたびになる。

 それだけでも、この建物がどれだけ古く、いたんでいるかを理解させてくれる。

 懐かしいお化け屋敷―――子供のころ、よくお化け屋敷の愛称で遊んでいた、海岸沿いにある古い建物に、私はいた。
 

「うわぁ、まったくあのころと変わってない」


 懐かしい縁側を歩きながら、部屋の中や、柱に刻んだ落書き、しみのついた天井などを思い出と共にみて回っていた。

 全てが全て懐かしく、まだ戦いなど知らなかったころの記憶がよみがえってくる。


「よっと」


 縁側に腰をかけて、懐かしい記憶に浸る。

 まだ、日は昇りきってないころあいだった。

 パラソルの下でぼ〜っとしてたときに、ふとこの家のことを思い出し、記憶をたどりながらここに来た。

 まだ時間はある。


「……くぅ」


 懐かしい記憶の中で、懐かしい空気を吸いながら、懐かしい日差しのもとに、私は眠りについた。

 なんとなく、いい夢を見れそうなきがした―――――






「おまえ、こんなところでなにやってんだ?」


 ふと、背後からの声で、私は目を覚ました。

 懐かしい夢の中から、現実に私を連れ戻したのは、聞き覚えのある声と人物。


「エイジこそ、何でこんなところにいるのよ」


 眠気の残る目をこすりながら、エイジのほうを振り向いて、文句を投げかけてやる。

 一応は、民家なのだ。

 ここが空き家であると知らない限りは、普通入っては来ないだろう。

 それなのに入ってきたということは、実際民家に不法侵入したことと大して変わりない。

 もっとも、それは私にもいえることなのだが……

 エイジは、私の隣まで歩いてくると縁側に私と同じように腰掛ける。

 
「はぁ……涼しくていい場所だな、ここ」


「私の質問に答えなさいよ……馬鹿」


 隣、肩が触れ合うような距離にいるエイジ。

 いつもなら気にしないような距離なのに、なぜかこの時は気になった。

 その性か、いつも異常に辛らつな言葉をエイジに投げかけてしまう。

 たぶん、エイジはみんなに頼まれて私を探しに来たのだろう。

 だけども、この沖縄は私の故郷で、この場所は私の思い出の場所だから……

 自惚れかも知れないし、過大評価かもしれない。

 でも、多分この青年は……私のことを気遣ってくれているのだろう。

 そんなことを、なんとなく思った。

 私にとっての太陽。

 圧倒的存在感と、その秘められた優しさが、私には心地よかった。

 だからだろう。

 もう少し、頼ってもいいなんて、思ったのは。

 もう少し、甘えたいと思ったのは。






ぽふっ




 
「な……る、琉菜!!?」


 エイジの肩に、無言で寄りかかる。

 薄い服からは、薄い潮の香りと、エイジの匂いがした。

 伝わる体温は、暑い夏の空気の中にありながら、私に安らぎを与えてくれた。

 私自身、今まで考えなかったわけではない。

 けれど、これではっきりした気がする。

 私こと、城 琉菜 は、紅 エイジ に恋していた。

 その兆候は、今までにあったようにも思われるし、無かったようにも思われるほどに曖昧だが。

 想いだけは、しっかりと胸に在った。

 だけど、それと同時に、この想いは伝えられないことにもまた、気が付いてしまっていた。

 私は、悲しいことに好きだという気持ちと同時に、伝えてはいけない理由に思い至ってしまったのだ

 だって、エイジの傍らにはいつもリィルがいた。

 だって、リィルのエイジを見つめる目が、他のみんなとは違った。

 だって―――――リィルのことを話す、エイジの瞳や、言葉の一つ一つに込められた思いが……違ったから。

 私は、リィルのためにこの感情を伝えることだけは、やめておこうと思う。

 でも、一度だけ……一度だけ、反則しちゃおうと思う。

 肩に寄りかかりながら、エイジの顔を見上げる。

 目と鼻の先、互いの吐き出す息がかかりそうな距離にお互いの顔がある。


「る、琉菜?」


 戸惑った、表情と、戸惑った声。

 エイジがそんな声を上げるのも無理は無い。

 けれど、私は、それを無視して……いや、それを黙らせるように。



ちゅ――――――――




 唇を重ねた。

 お互いの距離が無くなる。

 唇を通して伝え合うお互いの体温。

 
ミーン――――――



 遠く、蝉が鳴く声が聞こえる。

 それに混じって聞こえる風鈴の音。

 唇をゆっくりと離していく。

 ……意外と、私は落ち着いていた。


「な、なな……な……」



 それとは打って変わって、慌てに慌てているエイジ。

 口をパクパクと酸欠の金魚みたいに動かしているから……それが面白くて、大声を出しながら、腹を抱えて笑ってしまった。


「あはははははっ、あは、あははは、あんた、馬鹿でしょ!あっはははは!!!」


 それを見ているエイジは、笑って良いのやら、怒っていいのやら、困った顔をしていて、その顔をみてもう一回笑ってしまい、しばらくの間、私は縁側で、笑い転げていた。




 しばらく笑ってから、また、私は縁側に座りなおす。

 隣にいるエイジは、なんともいえない表情で座っていた。

 二人、ただ無言でしばらくの間限りなく青い空を見上げる。

 相変わらず、入道雲がもくもくと立ち上っていた。

 それをみてから、私はゆっくりと立ち上がる。

 エイジも、それにつられて立ち上がったようだ。


「おい、いったい何の真似だよ……さっきの」


 聞きたかったが、聞けなかったことなのだろう。 

 その言葉には、どこか恐れや、怯えが含まれていた。

 そんなエイジに振り返り、私はこういった。


「気にしない、気にしない!ただの夏の陽炎だからさ!!」


「は?」


「もう、甲斐性無いなぁ……ようは、一瞬の気の迷い。在ったことにしても良いし、なかったことにしても良いような曖昧なものなの!!」


 わざと、難しい言い回しをするが、言ってる内容は合ってると思う。

 リィルの事を思うなら、このキスは無かったことにするべきだ。

 でも、私にとって大事なキスだったから……だから、在っても無くてもどっちでもいい、どちらでも在る、陽炎のように曖昧なものなんだ。

 私は、エイジに笑いながらそう伝える。

 今のは無かったことにしようと。

 私は、エイジに笑いかける

 向日葵の花のように、明るく笑う。










あなたを見つめています――――――向日葵の花言葉のように



いつの日か、この想いが思い出になるそのときまで。










 

 







 この話は、ローダンセの異伝。

 ローダンセでは語られることの無い、忘れられた夏の陽炎。

 だけど、其処には確かに咲き誇っている。

 向日葵の花が―――――――








硝子瑠璃
2004年08月11日(水) 20時58分56秒 公開
■この作品の著作権は硝子瑠璃さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
 この作品は、ちょっと訳ありの作品。
 そして、これまた訳ありの理由で、このたびアップとなりましたw
 僕にしては珍しい、琉菜ものです。

この作品の感想をお寄せください。
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10 Myronprabs ■2021-04-16 03:07:30 91.210.251.159
チュイルとブリギッタがいい味出してる(って、注目するとこおかしいな俺。) 30 柿の種 ■2004-08-12 19:08:41 219.98.224.78
切ねぇ〜〜〜〜(泣)。でも不幸なわけでも沈んでるわけでもない。だったら俺が悲しむのも違うよなあ〜〜。
ちゃんとリィルと仲良くしろよエイジ〜〜〜。
50 tatsuaki ■2004-08-11 21:23:16 220.221.88.184
琉菜・・・な〜んかせつないなぁ〜。
30 山さんネジラー ■2004-08-11 21:08:10 219.104.57.17
ちょっとの訳を知っている私でしたw
琉菜いいねぇ…リィルに浮気気味の俺でしたが再び琉菜か?!w
50 ちゃーくん ■2004-08-11 21:03:56 219.98.181.146
合計 170
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