グラヴィトンゲーマーズ第三章之弐〜難病・エイジの覚悟、琉菜の想いとリムの思い〜紅
「ごほ、ごほほ、ごほっ…」

「ごほごほごほ、もう」

だだっ広そうな部屋からせき交じりの声がふたつ聞こえた。

「なんだって、この世界で病気なんかにかかるのよう… サンドマンのバカやろォォォォォッ! ごほっ!!」

 その部屋のちょっと(というかかなり)豪華なベッドの上でひとりの少女がうなった。

薄茶色の髪を両側で結んだ少女、琉菜だった。

その体は今、さしも美しいドレスをまとって横たわっていた。

彼女は今、この世界の一国の王女として存在するキャラクターであった。

 だが、なぜか病に倒れている。

さらにその横のベッドには薄汚れた衣服をまとった少女がいた。

同じ病に倒れた少女、リムであった。

 そしてふたつのベッドにはさまれるようにして、少年がイスにすわりこんで眠っていた。

皆さんもご存知のエイジである。

エイジは夢の中でどうしてこんなことになったのかを思い出していた。

(そう、あれは数日前の出来事だった。)



    −数日前−

 エイジは『昇天の山道』での一件の後、リムを背負って魔術都市『セントルージ』にたどり着いた。

しかし、魔術で守られ活気付いているはずの街はしんまりとしていた。

それを不審に思ったエイジはひとまず宿でリムの回復を待って、それから詳しく調査しようとした。

だがその翌日、リムが急に熱を出して倒れたのだ。

最初はただの風邪かと思ったエイジだが、熱が異常なほど高かったため、街の医者に見せたところ、この診断が来たのだ。

   `病名、GIJ症候群`

 原因不明の感染病で、治療法もなく、いまやセントルージをのみつくすほどに広まった不治の病である。

その症状はこの世界では密接なかかわりをもつ重力子を体内に取り込むことを妨害し、人体を内部から崩壊させていくという恐ろしい病だった。

そのため、健康な人間は全員隣国の用意した難民キャンプまで避難していた。

診断を聞いたエイジはいてもたってもいられずリムを宿のベッドに寝かせなおすと、そのまま治療法を求めて駆け出していったのである。

その道中でエイジは宮殿の衛生兵に出くわし、いろいろと尋問され、その過程で琉菜と再会したのであった。

しかし、琉菜もその病をすでにわずらっていたため、エイジはただふたりを寝る間を惜しんで来る日も来る日も看病しつづけるだけしかできなかったのだ。

 だがひとつの光明もあった。

この国の国王、この世界の琉菜の父親のあたる男がよくできた人で、リムとエイジを城内に引き取ったのだ。

そんな時、ひとつの朗報がとある旅人によってもたらされた。

その旅人は魔術、武術、医学などに精通しており、セントルージのものでさえ気付かなかったことを発見し、伝えたのだった。

            それは《呪い》だった。

呪いであることがわかったセントルージの人々は喜びにわいた。

しかし、この都市の最高レベルの解呪の術をかけても病状が一時的に回復するだけですぐに倒れてしまった。

そして…一月ほどの月日が流れた後、城にまた朗報がまいこんできた。

城の諜報部員が呪いをかけている術者を特定したのだ。

呪いというものは術者の思念を元にして出来上がる比較的簡単で驚異的な魔法なのだが、術者が倒れると、あんがい簡単に解除することのできる術なのである。

(それでも、ほかの魔法にくらべてタフなのは間違いない)

その知らせを聞いた国王はすぐさま、討伐隊を編成して送り込んだが、その数日後、むなしくも全滅の知らせが届いた。

その知らせは瞬く間に広がり、国民は嘆き苦しんだ。

 ある日の夜、エイジは考え事をしながらバルコニーで風景をながめていた。

(…俺は、一体どうしたらいいんだ。どうしたら…琉菜やリムを助けられるんだ…  仕方ないか)

「…クソッ」

エイジはひとり悪態をつくと刀の柄に手をふれた。

後ろから人の気配がしたからだ。

「エイジ…」

「琉菜…」

そこに立っていたのはまぎれもなく琉菜だった。

エイジは刀から手を離し、琉菜を見やった。

琉菜は気にすることなくエイジの横に立った。

「起きてて大丈夫なのか?」

「うん、今日は珍しく調子がよくてね。―エイジ、ひとつきいてもいい?」

「なんだ?」

琉菜の言葉にエイジは不思議に思いながらも琉菜を見つめた。

「うん、あのね、エイジ、あなたが討伐に向かうってほんと?」

琉菜の言葉が深く突き刺さった。

あれから数日、エイジは考えていた。―というよりも即断していたのだが、心のどこかでブレーキをかけている自分が腹立たしく思っていた。

その内容はこうだ。

エイジはこの時点ではちょっと高レベルの侍だった。(だいたい31くらい)

そのため、エイジは一刻も早く、琉菜たちを救うために旅立つ準備をしていたのだった。

「ああ、そいつをぶっ倒したら、すぐにでも戻ってくる。だから琉菜、お前はリムと一緒にここで休んでいてほしいんだ」

エイジはやさしい声でそういった。

だが琉菜はとんでもない行動に出た。

エイジの唇に自分の唇を押し付けて叫んだ。

「バカ…このオオバカッ!!」

琉菜はこのゲームを始めてからの数ヶ月間、心苦しい思いをしてきた。

その思いは雪のように降り積もり、琉菜ははかりの針が振り切れんばかりの重荷を背負い込んでいたのだ。

それを紅エイジという存在で、その存在を想うだけで耐え忍んでいた琉菜は、今になってそれを爆発させていた。

ゼラバイアとの戦いや、この世界で必死に看病してくれたエイジの優しさに触れ続けていた琉菜は、エイジの今の言葉によっておさえが効かなくなっていた。

「こういう時いつも自分を後回しにして!それで喜ぶ人がいると思うの!!このオオバカッ!!!」

「お、おい…琉菜」

「でも…あなたのそんなところが…好きになったのかも」

ひとしきりわめいたあと琉菜は静かにそういった。

「琉菜…俺」

エイジが口を開こうとしたとたんに琉菜は再び唇を押し付けてエイジを制した。

「続きは…本当の世界で聞きたいな。…エイジ」

「…ああ、そうだな」

 エイジはその後琉菜をベッドに送り込むと、指定席になった感のあるイスにすわった。

すると、リムが話しかけてきた。

「エイジさん」

「なんだ?リム、おきていたのか」

「はい、あの、エイジさんに聞いてほしいことがあるんです」

「まぁ、俺は別にかまわないけど。どうした?」

エイジはそのままリムの言葉に耳を傾けた。

「はい、ありがとうございます。実は…」

この後エイジはリムからわずかに残っていた記憶が鮮明になっていることを告げられた。

それはかつての自分が親らしき人物と一緒に遊んでいる記憶だったらしいのだが、その後がいまいちハッキリしないらしい。

それでも思い出せる限りではその後はかなりひどいものだったらしい。

大地は裂け、地面は血にまみれ、建築物は倒れている。そんなものだった。

リムはそれをエイジと一緒にいるうちに身に着けた明るさで振り払い、エイジに自分の思いを告げた。

「私は…エイジさんのことが好きです。だから、この幸せを守るために私はエイジさんと一緒に行きます」

「なにいってんだよ、ばかやろう。その体じゃ動くことだって厳しいんだろうが、それに…」

「わかっています。エイジさんには琉菜さんがいるって…でも、私はあなたを好きでいさせてください」

その決意に満ちた瞳にエイジはこれ以上何もいえなかった。

 そして、旅立ちの日が来た。

メンバーはエイジひとりである。

これ以上、あのふたりの病状を悪化させたくなかったエイジは夜明けと同時に城を出て目的地に向かう。

国王には事前に話を通してあるため問題はなかった。

はずだったのだが…

いつの間にか、人数が3人に増えていた。

このエイジの行動を見越してか、しっかり準備したふたりが門前に立ちふさがっていたのだ。

その服装は赤を基調とする衣服に身をつつんだ琉菜とリムだった。

この衣服には呪いや毒に対抗する力が備わっているため、このふたりもしばらくの間なら旅ができるようになっていた。

「ひとりで行くなんて事、絶対にさせないんだからね!エイジ!!」

「ただ待つなんてことほど苦しいことはないんです。そのことを考えてください!エイジさん!!」

本当に前途多難なゲームになりそうだ。

エイジはこの上ないほどそう感じていた。







                第三章之弐   完
アケヤ
2005年03月05日(土) 16時55分08秒 公開
■この作品の著作権はアケヤさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
いつもより長めになった気がします。
まぁ、そこはさておき、反省するべきところを発見しました。…の使いすぎです。
今後、努力するので今回は見逃してください。
次回はエイジ編最終回を予定していますので
興味のある方はへっぽこな駄文を見てやってください。

      アケヤでした。

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看病イベントってやつですね。ゲームだということを忘れそうなくらいのめりこんでます。
リムなんですが、やはりリィルなんでしょうか?そういえばあの子も昔記憶なかったな〜、と。
50 tatsuaki ■2005-03-05 22:00:04 218.47.213.221
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