超重勇者グラヴィオン ACT.01−勇者、あらわる−
 青い巨人が出てきたことによって、エイジたちはどうにかあの状況を打破して再び避難を始めていた。

だが、この襲撃によって交通網が寸断されてしまい、どの避難用施設にもたどり着けずにいた。
そんなときに事件は起こる。
「くそっ、ここもだめか!?」
エイジは怒鳴りつつも気絶したままのリィルをおぶり、足をくじいた琉菜に歩調を合わせながら走り続けていた。
そして次の施設に向かうためにいつもは活気付いている商店街へ入った瞬間。

 ―刹那。

 いきなり瓦礫が崩れ落ちてきたのだ。
「なっ、くそぉっ!」
「きゃっ」
とっさにエイジは乱暴だが、と思いつつ琉菜を突き飛ばし、リィルをしっかり抱えると自分も横っ飛びに跳躍した。
その直後、瓦礫が今まで自分のいたところに落ちていた。
エイジのこのとっさの判断がなければ、まず助からなかったであろう。
しかし、本当に助かったとはいえなかった。

「琉菜!無事か!!」
エイジは瓦礫の向こうから返事が返ってくることを願いつつ叫んだ。
そう、とっさとはいえ、エイジは琉菜を自分たちとは反対側、つまり琉菜を施設側に突き飛ばしてしまったのだ。
一瞬、最悪の事態が頭によぎったエイジだったがそれは心配なかったようだ。
すぐに元気な返事が返ってくる。
というより、怒鳴り声だが…
「いつつ、こら!エイジ、もうちょっとやさしくできないの!!」
「しゃあねぇだろ!というより、琉菜、そっちは避難所までいけるか!!」
エイジは怒鳴り返しつつも、瓦礫の向こうの状況を聞いた。
この状況では合流することはできないと、エイジの本能がそう告げていたからだ。
「んっと、大丈夫みたい… なんとかいけるよ!」
琉菜のそのセリフを聞いてホッとしたエイジは瓦礫の向こうにいる琉菜に言い放った。
「じゃぁ、琉菜、お前はそのまま避難所へ走れ!」
「えっ、でも…っ!」
「いいから早く!俺たちもすぐにそっちに行くから!!」
「う、うん。わかった!」
琉菜の気配が遠ざかっていくのを確認した後、エイジはリィルを抱えたままもと来た道を引き返していった。
こういうときは悪いことが重なるものである。
ヒィィィィィッ 、という音の後に商店街の出入り口付近になにかがぶつかったような衝撃がエイジを襲った。

 その衝撃がやんだ後、エイジは目を見張った。
そこには機首から出入り口へ突っ込むように横たわった見慣れない戦闘機だった。
恐らくはEFAあたりの最新鋭機だろう。
勝手にそう判断したエイジは直後にここから出られないことを悟った。
先ほどの瓦礫で避難所までの道はふさがれ、さらにこの戦闘機のせいで最後の出口も完全にふさがってしまったのだった。
「マジ…かよ」
ようやく口にした言葉は絶望したような感じだった。
それもそうである。
いつあの機械の化け物が襲ってこないとも限らないときに唯一の退路を断たれ、こんな閉鎖空間に閉じこめられたのだあれば酸素の問題もあいあまって、エイジの心境は暗くなって当然だった。

 そんな時、エイジの目の前の戦闘機のキャノピーが開き、中からパイロットらしき女性が崩れ落ちてきた。
その女性は銀色の髪を短めのポニーテイルに結っており、年もエイジとそんなに離れていそうには見えなかった。
「うぉっ!」
エイジは無意識のうちにリィルを商店のシャッターに持たれかけさせると、その女性に向けて走り出していた。
こういうことは何があろうとも放っておけないのがエイジのいいところである。
そしてパイロットの女性のところにたどり着くと女性の上半身を腕で抱え上げて声をかける。
「おっ、おいっ!大丈夫か!!」
「う、うぅん…」
エイジの言葉にうなり声を上げながら、少し目を開けた女性(いやこの場合少女というべきか)はそのまま気絶してしまった。
「ったく、まいったなぁ…」
エイジは愚痴をこぼしたが、状況は一向に好転していない。
いや、それどころか悪化している。
第一にココから出ることはまず不可能、第二に水・食料の問題、第三に空気の問題、これはけが人の増えたエイジにとって最大の悩みの種だった。
このままでは確実にもたないのは確かなことであったが、今はどうすることもできなかった。

――ドォォォン、バババババン!

 爆発や銃声が近づいてくる。
(万事休すか…)
エイジがそう思ったとき、ふとリィルとその隣に持たれかけさせた銀髪の少女の顔をみやった。
義理とはいえ、かわいい妹のリィル。
どこの誰かは知らないが、そんなに年は離れていないはずの少女。
そんな娘をこのまま死なせていいものだろうか?
という疑念にエイジはとらわれた。
「よしっ!きめたっ!!」
だがその疑念はエイジの即断によって解決した。
無論、『何が何でも助ける』という結論である。
そして彼はそこら中を調べまわった。
何かいいものが見つかると思ったからだ。
しかし、数十分たったころ、爆発がさっきより近くなっていることにエイジは気付いた。
ここももう危ないだろう。
「くそっ、さっきの巨人はどうしたんだ?」
彼はそういいつつもあたりを調べ続けるのであった。


―――数時間前の戦場

 そこでは死闘が繰り広げられていた。
しかし、勝負は目を見るより明らかで化け物のほうに分があった。
恐らく、青い巨人のパイロットは初陣の新米兵士だろうと熟練の兵隊ならそういうであろう。
事実、そうであった。
青い巨人のコックピットにいる少年は息を切らしながら、巨人の拳を怪物に休むことなく撃ち込んでいく。
だが、たいしたダメージもなく、怪物の親玉は押してくるのだった。
そのせいで青い巨人は後退を余儀なくされ、今、エイジたちのいる商店街まで近づいてきているのだった。
「うおぉぉぉぉぉぉぉっ!」
青い巨人のパイロットは雄たけびを上げつつ、再び拳を振り上げた。

そして商店街では…

「…また、近くなってきやがったな。急がねぇと」
エイジはそういいながら、脱出案を考えていた。
今まで考え付いた試みはすべてダメだった。
一つ目は瓦礫のすき間から脱出すること、これはみっちりと積み重なった瓦礫によって阻まれる。
ふたつ目は商店街の店の裏口を使って逃げようというもの。
だが、これも衝撃で建物自体の骨組みがゆがんでいるのか、ドアが開かない。
三つ目はあの戦闘機を使って瓦礫を吹き飛ばすという案。
こんなのは論外である。
「まいったな」
今日何度目かはわからないセリフをはくと、エイジは自分の足元にマンホールがあることに気付いた。
そして彼は脱出案を電撃的に閃かせた。
「こいつはいける…」
そういうと彼はマンホールを開けると、持たれかけさせた二人の少女を担ぐとそのままマンホールを降り始めた。
エイジが閃いたことは言うまでもないだろう。
下水道を使って逃げ出すというものだ。
確かにこれならばうまく逃げおおせれる確率はあった。
なんせこの街の下水は地下繁華街の関係で地下50メートル以上まで掘り下げられた位置にある。
ここならば戦術クラスの兵器を多発しない限り大丈夫なはずだ。
途中、手のしびれや疲れからか、リィルや少女を落としそうになったり、自分が落ちそうになったりしながらも、エイジはついに下水道の点検用通路に足をつけた。

「ふぅ〜っ!ここまでくりゃ、だいじょうぶだろ」
エイジはそういって一息つくと、担いでいた二人を横にして自分は壁にもたれかかった。
すると、急にまぶたが重くなり、意識がホワイトアウトしていった。
安堵したのか、彼は眠った。
夢ならばさめることを願って。
しかし彼は知らない。
彼らをずっと見ている存在のことを…



―――エイジ。
何か声のような音が聞こえた。
 ―――エイジ。
しかも、自分をよんでるらしい。
  ―――おきなさい、エイジ。
やさしい女性の声だ。
そこまで認識すると、エイジは目を覚ました。
「姉さん?」
起き上がってそうそう、そんなことをつぶやいたエイジは何かを感じていた。
(誰か… 俺をよんでいる?)
そんな風にエイジは感じていた。
そして、いてもたってもいられなくなった彼はふたりをもう一度担ぐと、下水道の奥へ向けて歩き出した。
すると、道の突き当たりに点検に来た職員用の管理人室のような部屋があり、エイジは迷うことなく扉を開けて中に入った。

 部屋の中はいたってシンプルだった。
簡素なベッドに常務用の机、本棚には何か小難しい本やそれに関係した書類のファイルなどが所狭しと並べられていた。
エイジはベッドにたまったほこりを払うと二人をねかせ、部屋の奥へと進んだ。
部屋の奥は倉庫のようになっており、食料や水、医薬品などがかなり備蓄されていた。
「これなら、しばらくはもつな…」
エイジはそういうと、ロッカールームらしき部屋があった。
そして彼はひとつのロッカーの前に止まった。
そこに信じられないような名前の入ったロッカーだったからだ。

 ―職員No.215 紅アヤカ

「なっ、姉さん!?」
そう叫んでエイジはロッカーを開けようとするとピッという電子音がして床に穴が開いた。
当然、エイジの立っているところである。
「え? うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
彼はひとつの悲鳴を残して落とし穴に消えた。
もちろん、穴はすぐにふさがっていた。

「いつつ、一体なんなんだよ…」
エイジはあの部屋からだいぶ下にある部屋に落とされていた。
それでこの程度とは、彼の頑丈さには頭が下がる。
辺りを見回していた彼は一台のエアバイクを発見した。
しかも、最新鋭の装備のものだ。
「おいおい、エアバイクをたった一台置いてあるだけの部屋なんて、怪しい以外のなにものでもないぞ」
そういいながら、彼はそのエアバイクの垂直に取り付けられたハンドルに手を触れた。
すると、ガコンという音がひびく。
「これは… もしかして」
エイジはいやな予感を感じた。
その瞬間!
エアバイクが沈みだしていき、エイジも当然それに巻き込まれる。
「俺はぁっ、疫病神かぁぁぁぁぁぁぁぁ〜ぁっ!?」
その叫びもむなしく、彼はエアバイクにまたがり、エレベータのように沈んでいくそれを見ていることしかできなかった。

 その直後にエアバイクが動きを止めた。
どうやら、目的地に着いたらしい。
エイジはもういやだといった顔つきで降りようとするが、突然、頭上からガラスのようなものが降りてきて、それを阻んだ。
「えっ?これって、今日何度目?」
あきらめたような声でそういうと、急激な加速が彼を襲った。
「ぬぉわぁぁぁぁぁぁぁあぁぁああっ!!」
その先に彼が見たものは空と雲だった。

「あれは…」
先ほどの青い巨人はそうつぶやいて、空を見た。
そこには一筋の飛行機雲と赤と青のカラーリングがまぶしい戦闘機があった。
しかし、その戦闘機はよろよろ飛び回っているだけでいつ撃墜されてもおかしくなかった。
そこへ、容赦なく怪物のビームが迫った。
その戦闘機のコクピットでは機械と格闘するエイジの姿があった。

「ええい、なんだよこれ! 飛行機か?」
叫びながら、正面に据え付けられた球体上のモニターを見るとそこにはワイヤーアートで描かれた戦闘機らしきシルエットが映っていた。
「もしかして…戦闘機!?」
そう叫んだ直後、モニターの画面が変わり、こんな表示がされていた。
『指紋・声紋確認、パイロットパーソナルデータ。自動登録完了』
「…何? これ?」
一瞬、思考がフリーズしたエイジは何がなんだか、わからなくなった。
そこへ警報が鳴り響き、彼を現実に引き戻した。
『10時方向より熱源感知、レーザービーム砲と判断。距離2000。回避不能』
モニターの表示を見た瞬間、エイジは無意識のうちにアクセル(?)を全開にしアフターバーニアをふかし、ギヤのシフト(?)を即座に変更。
さらにその瞬間にグリップを思いっきり左に切った。
すると、どうだろう。
コンピュータが回避不能と判断した攻撃をあっさりとよけてしまったのだ。


『…信じられません』
いきなりコクピットにひびいた声にエイジは驚いていた。
それにあたふたしていると、第二撃が迫ってきた。
「こなくそぉっ!」
今度は左縦旋回による回避運動で難なくクリアすると、エイジはこの戦闘機がエアバイクとほぼ同じ要領で動かせることを理解した。
それと同時にキャノピーの横あたりに小さなディスプレイパネルが開いて、そこにめがねをかけた緑色の髪の少女が現れた。
通信機らしい。
『あの、あなたはどちらさまですか? なんでその機体に乗っていらっしゃるんですか?』
先ほどの声だ。
どうやらこの少女がこの戦闘機の仲間らしい。
(ということは、あの巨人の仲間かな?)
なんていうことを考えていたエイジに対し、少女はおしとやかに詰め寄った。
『こたえてもらせんか?』
『かまわんよ、エィナ』
と、そこへもうひとつのパネルが開き、何かの管制室のような部屋に立っている美形といって差し支えない顔立ちの青年が現れ、少女にそういった。
『サンドマン様、ですけど…』
エィナと呼ばれた少女は心配そうにしたが、彼は気にもせずこういった。
『彼もGに選ばれし勇者だ。案ずることはない』
『かしこまりました』
彼らの会話を聞いていたエイジは不思議そうにしていた。
(勇者って、一体なんだ? それに今の会話って明らかに主従関係の人間の会話だな。例は…主人とメイドってところか? だけど、何でこんなのの仲間が)
などと、思案していると、サンドマンと呼ばれた青年がエイジに話しかけた。

『私はクライン・サンドマン。特殊武装集団〈アースガルツ〉の創立者にして最高司令官だ。君は?』
「えっと、俺は紅エイジ。とんでもない目にあっているうちになぜかここいた」
あんな目にあい続けたせいか、いつになく冷静な顔でそういった。
『シグレ エイジ? まさか…』
「ん、俺のこと知ってんのか?」
サンドマンが自分の名を聞いてへんな反応をしたので、エイジはそう返すと彼はなんでもないと答えた。
『ただ、知り合いと同じ名前だったのでね』
と付け加えて。
『よし、ならば、君がいることで勝率はほぼ100%の戦いをしよう』
「俺がいるから、勝率100%?どういうこっちゃ??」
『つまり、こういうことだ。グランナイツの諸君、超重合神せよ!』
サンドマンがエイジの疑問をさえぎり、手に握った杖を掲げてそういいきると、青い巨人とその仲間と思われる戦闘機、ドリル戦車が現れ、巨人が叫び声をあげた。
『了解、エルゴ・フォォォーム!』
途端、黒い半透明の空間が青い巨人の胸に埋め込まれた赤い宝石から広がり、あたりにいる各機を吸い寄せ始め、フォーメーションが取られるが、戦闘機のひとつがそのフォーメーションから外れ、落下していく。
その戦闘機はエイジの乗る機体だった。
そのときのエイジは急激な加速に見舞われた後、視界や感覚を一時的ながらも失ったのだった。
すんでのところで持ち直したエイジに別の通信が入る。
『ブラックアウトね、急激な加速や衝撃を喰らったときによくなる現象よ。けど、一度経験すれば問題はないと思うわ』
などと、画面の中の金髪の美女が言った。
「そりゃ、ありがたいことで…」
エイジがそう答えた。
『うむ、では仕切りなおしだ。グランナイツの諸君、超重合神せよ!』
再び、サンドマンのセリフを聞いた青い巨人はもう一度、あの空間を出していく。
『超重・合神ッ!』
すると、巨人と各機が変形をはじめ、次々に巨人の手足になっていく、そして…

「グラヴィオン!」

そこにはさらに巨大な巨人がいた。
「ゆくぞ!」
巨人のパイロットの声が響き、グラヴィオンは突っ込んでいく。
そして、拳による一撃を加えた後に命令が飛ぶ。
「脚部ミサイル発射!」
なにもわからないエイジに金髪が言う。
「右グリップ奥についている赤いのと1番スイッチを押してトリガーを引いて!」
「お、おう!」
言われたとおりに操作すると搭載された武装のセイフティがはずれ、ターゲットをオートロックオンし、ミサイルが発射される。
しかし、放たれたミサイルは敵のビームによって撃墜されてしまった。
(というより、街中でミサイルぶっ放すのもどうかと思うのは気のせいか?)
とも思ったのだが、後が怖いので言うのをやめたエイジだった。

 そこへ、各コクピットに警報が響く。
直後に背後から、強い光が襲ってきた。
巨人のパイロットの機転でどうにかよけることに成功したのだが、そこで…
『重力子臨海ポイント突破!グラヴィオン、強制分離します!』
管制室からの通信と共に巨人は分離し、元の姿に戻って地面に叩きつけられていた。
『グランナイツの諸君。即時撤退せよ』
この言葉が響くコクピットの中で気を失いかけているパイロットたちを守るように…
蔵型師
2005年07月20日(水) 19時33分13秒 公開
■この作品の著作権は蔵型師さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
久々に更新しました。
今回はエイジの意外な才能。
ドラテクをご存知Gアタッカーで披露してもらいました。
ちなみに、次回予告をいずれUPさせていただきます。
ご感想のほど、よろしくお願いします。

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エイジって落ちるの定番ですかねー
10 アソウ ■2005-07-22 19:29:17 221.187.139.226
エイジのドラテクがコンピュ−ターを上回ってるとこが好きになりました。やっぱり主人公には持ち味の一つはないと。
敵はてごわい上にいきなり合神が解除されて大ピンチ。どこが勝率100%?と思わずつっこみそうです。
次回楽しみにしています。
50 tatsuaki ■2005-07-20 22:48:35 220.220.2.8
合計 70
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